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HIVと性感染症

HIV以外にも、多くの性感染症があります。
予防方法やHIV陽性者として生活する上で注意すべき点をご紹介します。

性感染症について

性感染症(STI=Sexually Transmitted Infections)とは、主に性行為によって人から人へうつる感染症のことであり、エイズの原因となるHIVも性感染症の1つです。性行為をする限り、誰でも性感染症にかかる危険があります。新規のHIV感染は、8割以上が性行為によるものです。*

なかには感染しても症状が出ない病気もあるため、知らない間に他の人にうつしてしまう可能性もあります。しかし、その多くは早めの検査と治療で対処することができます。性感染症のリスクや予防方法について、しっかり理解しておきましょう。

*エイズ予防情報ネット四半期報告 2022年[令和4年第2四半期]を参考に作成
https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/index.html (参照 2022-09-07)

感染経路と予防方法

性感染症は、性行為によって感染します。性行為には、腟・口腔 (フェラチオ・クンニリングス)・アナルセックスが含まれます。

主な感染経路は、以下の3つです。

  • 感染した人の粘膜や精液、腟分泌液に触れて、病原体が侵入する
  • 皮膚や粘膜の小さな傷から、病原体が侵入する
  • 便のなかの病原体が手などについたのち、口に入る

感染を予防するにはコンドームを正しく使用して、自分の性器・肛門・口が相手の粘膜や体液と直接触れないよう注意する必要があります。ただし、コンドームの使用だけですべての性感染症を予防することはできません。コンドームの他の予防法としては、ワクチンの接種(A型肝炎、B型肝炎、尖圭コンジローマ)が有効な場合もあります。

性感染症の種類

代表的な性感染症について、感染経路と症状をそれぞれご紹介します。症状が出るまでに数日〜数ヶ月の潜伏期間があるものや、免疫がつくられないために、一度治ったとしても何度も感染してしまうものもあるため、注意が必要です。もしあなたにこれと当てはまる症状がありましたら、主治医に相談してみてください。

性感染症の種類と特徴

疾患名 感染経路 症状
梅毒

・性器同士の接触

・腟性交

・アナルセックス

・オーラルセックス

・性器のしこり、ただれ
(痛みかゆみなし)

・口の中のただれ
(痛みかゆみなし)

・手のひら、足の裏、全身の発疹

・リンパ節のはれ

・視力低下

・心臓、血管の病気

・神経麻痺

・認知症

性器クラミジア

・性器同士の接触

・腟性交

・アナルセックス

・オーラルセックス

・(男性)排尿時痛、尿道搔痒感

・(女性)おりもの、不正出血

※直腸、咽頭感染の場合は、自覚症状がなく、感染に気づかない場合もあります

淋菌感染症(淋病)

・性器同士の接触

・腟性交

・アナルセックス

・オーラルセックス

・(男性)排尿時痛、膿尿

・(女性)おりもの、不正出血

※直腸、咽頭感染の場合は、自覚症状がなく、感染に気づかない場合もあります

アメーバ赤痢

・アナルセックス

・オーラルセックス

・糞口感染(お尻をなめる)

・腸炎:下痢、血便
(イチゴゼリー状)、
しぶり腹・腹痛

・肝膿瘍:発熱、吐き気、嘔吐

性器ヘルペス

・性器同士の接触

・腟性交

・アナルセックス

・オーラルセックス

・キス

・性器の不快感、かゆみ、痛み、
水疱、
びらん

・発熱

・リンパ節のはれ

A型肝炎

・オーラルセックスなどの性的接触ウイルスが付着した手で口に触れること

・糞口感染(お尻をなめる)

・だるさ

・発熱

・吐き気

・嘔吐

・黄疸

B型肝炎

・腟性交

・アナルセックス

・急性肝炎(発熱、だるさ、黄疸)

・慢性肝炎

尖圭コンジローマ

・腟性交

・アナルセックス

・性器や肛門にカリフラワー状のイボ(痛みなし)

※感染しても症状が出ないことがあります

毛じらみ症

・感染している人の陰毛との接触

・性器周辺の痒み

※感染してもほとんど症状が出ないことがあります

疥癬

・腟性交

・家族内の濃厚接触

・強い痒み

・赤く小さな発疹

トリコモナス症

・腟性交

・アナルセックス

・オーラルセックス

・(男性)無症状が多い、
排尿時痛、頻尿

・(女性)おりもの増加・臭い、
性器のかゆみ

性器カンジダ症

・性器同士の接触

・自己感染
 (健康な人でも体内に菌を持っていることがあり、抵抗力が落ちた際に発症する場合がある)

・(男性)無症状が多い、かゆみ、水疱

・(女性)外陰部のかゆみ・発疹、
おりもの増加(白、ヨーグルト状、かたまり)、
性交痛

厚生労働科学研究事業 HIV検査・相談マップ「これって性感染症?」を参考に作図
https://www.hivkensa.com/sti/ (参照 2022-09-07)

東京都性感染症ナビを参考に作図
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/seikansensho/index.html (参照 2022-09-07)

HIVと性感染症の関係

HIVへの感染が、他の性感染症に及ぼす影響

HIV以外の性感染症にかかると、HIVに感染しやすくなることが知られています。本来、HIVは感染力の強いウイルスではありませんが、他の性感染症にかかると、性器、直腸の炎症部からHIVが体内に侵入しやすくなり、HIVの感染を受けやすくなるのです。特に潰傷病変がある場合は注意が必要で、男性では10〜50倍、女性では50〜300倍もHIVの感染リスクが高まるといわれています。*

その一方で、HIV陽性者が別の性感染症にかかった場合、罹患した感染症によっては進行が速くなり、重症・難治化する傾向があります。性感染症にかかったら、一度HIVを含むすべての性感染症の検査をすることをおすすめします。

* HIV感染症「治療の手引き」25版P31を参考に作成
http://www.hivjp.org/guidebook/hiv_25.pdf (参照 2022-09-07)

性感染症の危険因子

  • コンドームなしで腟性交(腟に陰茎を挿入する性行為)、肛門性交(肛門に陰茎を挿入する性行為)などの性行為をしたことがある
  • 口腔性交(陰茎、肛門、または女性外陰部に口をつける性行為)をしたことがある
  • これまでHIV以外の性感染症にかかったことがある
  • あなたのパートナーが性感染症にかかったことがある

上記の危険因子が該当し、何らかの症状が出たら、早めに主治医に相談しましょう。
一方で、症状が出ない性感染症として、咽頭、直腸の淋菌とクラミジア感染症、慢性B型肝炎などもあります。このように、性感染症の種類によっては、目立った症状がないものもありますので、心配な方は、たとえ症状がなくても病院で受診・検査することをおすすめします。

少しでも気になったときはもちろん、
不安がないときこそ、
健康状態をふまえ将来の治療について
考えるチャンスです。

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