通院前チェックをしてみる

治療とは、
医療者との
チームワーク

このコンテンツの監修医師
独立行政法人 国立病院機構
大阪医療センター
HIV/AIDS先端医療開発センター 
特別顧問*
白阪 琢磨 先生

近年、HIV感染症の治療は、1日1錠の治療薬を服薬し続けることで、非感染者と変わらない余命が期待できるほど大きく進歩しています。治療開始後数ヶ月で多くの方は血液にHIVを機器で測定できないくらいまでに抑え続けることができます。そうなるとご本人の健康状態の回復と維持、さらには他への感染を大きく防げられます。

1日1錠の治療薬も1つではありません。治療と向き合い服薬を続けるため、あなたが自分のライフスタイルに合った治療をえらぶ事が重要です。お薬を選ぶ時に、どんな小さな悩みでも一人で抱え込まずに、医師や看護師、薬剤師に遠慮なく相談してください。医療者は「患者のために、私は何ができるのか」を常に考えながら医療を続けています。お薬以外の悩みでも、あなたがその悩みを打ち明けてくれることで、他のHIV陽性者の方々やその支援団体に対する支援へとつながるキッカケになり、あなたの悩みがいくぶんでも軽くなるかもしれないのです。

HIVの治療において、医師・看護師・ケアワーカーは治療を続けるためのあなたのチーム。どんな小さな悩みでも安心して話ができ、あなたのライフスタイルや意見を尊重してくれる存在なのです。 あなたに今、困ったことは起きていないのか。その胸のうちにどんな思いを抱えているのか。あなたの健康上のニーズを満たすためにあなたのことを知りたい、そう思っているチームメイトなのです。

診療とは、
小さな悩みを
共有する場

HIVの専門家である主治医は、ウイルスや治療方法に関する最新情報を知っています。分からないことや悩んでいることはためらわずに聞いてみましょう。どんな内容でもいいのです。間違った質問といったものは存在しなく、唯一言える間違いは「悩みがあるのに、言わないこと」です。医療者とのチームワークを高めるためにも、担当医に理解できないことを説明してもらってください。

医療者と相談しながら、
治療をえらぶ

薬を変えると、
今後使える薬が減ると聞いた・・・
もし変更して調子が悪くなっても、
元に戻せないらしい・・・

例えば、睡眠困難、食欲不振、めまい・
ふらつき、悪心・嘔吐など・・・

こうした症状の軽減や飲みやすさの改善などのために薬を変更しても、医師の指示にしたがえば今後選べる薬の種類が減ることはありません。また、新しい薬が合わなかったときは、元の薬に戻すこともできます。医薬品は年々進化していますので、もっとラクに飲める薬が出ているかもしれません。過度に薬の変更を恐れるのではなく、ライフスタイルと不快な症状をガマンすることとのバランスを考えて、主治医とよく相談してみることが大切です。

自分らしさを
キープしながらの治療

多くのHIV薬が、ホルモン療法を含む他の薬と一緒に安全に摂取できます。ほかの療法を受けているトランスジェンダーの人もそうでない人も、自分のライフスタイルと健康状態について医師に相談してください。サプリメントを含む、あなたが服用しているすべての薬についてキチンと医師に伝えてください。あなにのライフスタイルに合ったHIV治療を見つけることは、ワガママじゃないことを知ってください。

長期療養時代
の治療を考える

抗ウイルス療法の定着により、HIVの治療目標はウイルス抑制を中心に考えられてきました。しかし、これからのHIV治療はウイルスの抑制だけではありません。HIVとともに生きるみなさんが、生涯にわたって健康状態を良好に保っていくために、個々のライフスタイルに合った、他疾患の治療に影響の少ない治療を目指していく時代です。

現在日本では、約27,000人**がHIV陽性者と推定されていますが、ヨーロッパとアメリカで行われた大規模コホート研究***によれば、長期治療に適した新規抗HIV薬の登場によってHIV陽性者の平均寿命が改善され、一般の人とほぼ変わらない水準であると報告されました。たとえHIV陽性であっても、適切な治療を続ければ健康的な生活を送ることができるのです。

*先生のご所属・肩書は2024年4月時点のものです.

**Iwamoto A, et al. PLoS One. 2017;12: e0174360.

***Antiretroviral Therapy Cohort Collaboration, Lancet HIV. 2017;4: e349-e356.