B型肝炎
B型肝炎
原因となるウイルス・発症のしくみ
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)が血液や体液を介して感染することで発症します。主な感染経路は粘膜の接触をともなう性行為のほか、薬物使用時などの注射器の共有でも感染します。HBVに感染しても一過性であることが多い一方で、PWHの方ではHBVとの重複感染と、HBVの持続感染(慢性化)も多く、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞がんへと進行するリスクがあります。
また、B型肝炎の感染リスクは、クラミジアや淋菌など、よく知られた性感染症と同程度と考えられています。同一施設に通うMSMの方の調査では、クラミジア・淋菌の新規感染率は年間3.8%であったのに対し、B型肝炎も年間3.8%であったことが報告されています。
主な症状とその部位
感染から6週間~6か月の潜伏期間を経て、黄だん(皮ふや白目の部分が黄色くなる)、だるさ、食欲の低下、悪心、褐色尿(尿が赤茶色になる)などの症状があらわれます。多くの場合HBVは自然に排除され、症状が軽い場合は感染に気付かないまま治ることもありますが、一部の人は急性B型肝炎を発症し、まれに急速に肝不全が進み死に至ることもあるため注意が必要です。
診断
B型肝炎の診断は、血液検査でHBs抗原/抗体、HBV-DNA定量検査、HBe抗原/抗体、HBc抗体などを調べます。感染初期は、検査でウイルスや抗体を検出できるようになるまでに一定の時間がかかることから、検査が陰性となる期間があります。HBs抗原検査の場合感染から約2か月かかるため、より早く感染を確認したい場合は、感染から約35日で検出が可能となるHBV-DNA定量検査が行われます。
治療・予防
急性B型肝炎は自然に軽快することが多いため、基本的には症状などをやわらげ、体の回復を助けるための治療やケアを中心とする支持療法が行われます。
感染から6か月以上が経ち、症状が慢性化した場合は、ウイルスの増殖を抑えて、長期的な肝炎から肝硬変や肝細胞がんへの進行を止めるために抗ウイルス治療を行います。HBVを体内から完全に排除することは難しいため、飲み忘れることなく服薬を継続することが重要です。
B型肝炎はワクチンで予防できる病気のひとつです。日本では、2016年10月より0歳児を対象としたB型肝炎ワクチンが定期接種化されています。定期接種を受けていない世代の方で、特にパートナーがHBVに持続感染している場合や複数のパートナーと性交渉をもつ場合、B型肝炎ワクチンの接種(自己負担)が望ましいと考えられます。
B型肝炎ワクチンを接種したことがあるか、HBVが現在体内にあるか、過去にB型肝炎にかかったことがあるかどうかなど、ステータスによって心がけたい行動は異なります。
感染を予防する·ほかの人にうつさないための注意点
あなたのステータスはどれですか?
B型肝炎に関するステータスを知りましょう
B型肝炎ワクチンを接種したことがあるか、HBVが現在体内にあるか、過去にB型肝炎にかかったことがあるかなど、ステータス別に対応が異なるので、治療と予防のためにそれぞれの行動のポイントを参考にしてください。
解説:B型肝炎ワクチン(自己負担)を3回接種することで、90%以上の方が免疫を獲得でき、その免疫は30年以上持続することが報告されています。
解説:PWHの方や免疫不全疾患をお持ちの方、またHBVへの感染リスクが高い環境にいる場合は、定期的に血液検査を受けてHBs抗体価が下がっていないか確認し、ワクチンの追加接種(自己負担)について主治医と相談してください。
解説:現在HBVに持続感染している場合、抗ウイルス薬などによる治療を受けている場合は、自己判断で中止することなく、治療を継続してください。
また、治療を継続していても、HBVに感染していると肝細胞がんになるリスクがあります。
日本では特に、HIVとB型またはC型肝炎ウイルスに重複感染している方に対する肝細胞がんのスクリーニングが十分に実施されていないことが明らかになっています。症状がなくても検査(右表を参照)を受け、肝硬変や肝細胞がんを早期に発見することが重要です。
ぜひ、定期的な検査の実施について主治医に相談してください。
解説:過去にB型肝炎にかかったことがある方でも、再びHBVが活性化し、一部は劇症化して、命にかかわることがあります。がん治療・免疫を抑える治療を受ける際、また抗HIV治療の内容を変更するときは、必ず主治医に相談しましょう。
過去の検査でB型肝炎にかかったことがあると言われた場合
がん化学療法を受けている、もしくはこれから受ける予定がある場合
免疫抑制療法を受けている、もしくはこれから受ける予定がある場合
B型肝炎にも効果のある成分を含む抗HIV薬の変更・中断を検討している場合
B型肝炎の治療を受けている方は、主治医と相談のうえ、次の頻度を目安に定期的に検査を受けましょう。
また、くすりによってはHBVの再活性化や重症化につながることがあります。
あたらしいくすりを処方されたり、服用中のくすりの変更または中断を考えている場合は、自己判断せず、必ず主治医に相談しましょう。
CDC. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021.
Morbidity and Mortality Weekly Report. Recommendations and Reports 70(4), July 23, 2021.
Konishi K, et al.: J Infect Chemother 2025; 31(2): 102557.
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■B型肝炎診療監修
大阪医療センター 感染症内科*
小西 啓司 先生
小西 啓司(こにし けいじ)
医学博士、大阪大学大学院医学系研究科感染制御学招へい教員、日本内科学会認定総合内科専門医、日本感染症学会認定感染症専門医、日本エイズ学会認定指導医、インフェクションコントロールドクター(ICD)。
2015年大阪市立大学医学部医学科卒業、2025年大阪大学大学院医学系研究科博士学位取得。2015年天理よろづ相談所病院臨床研修、2017年より大阪市立総合医療センター感染症内科、2023年より大阪大学大学院医学系研究科特任助教等を経て、2025年より独立行政法人国立病院機構大阪医療センター感染症内科所属、現在に至る。
2025年に『その常識は古いかも!? 一冊で解決する 性感染症外来診療』(金芳堂)を上梓。
*先生のご所属・肩書は2026年8月時点のものです